薬局で薬を受け取ろうとしたときに「この薬は品切れです」「入荷がいつになるか分かりません」と言われた経験はありませんか?
ここ数年、医薬品の供給不足は社会的な問題にもなっています。なぜ薬はこんなに品薄になりやすいのでしょうか?
本記事では、薬剤師の視点から 薬が不足する主な原因と患者さんができる対策 をわかりやすく解説します。
薬が不足する主な原因
製造の厳しいルールと工場トラブル
薬は人の健康に直結するため、製造過程には厳しいルールがあります。
品質管理に少しでも問題が見つかると製造ラインが止まり、出荷も一時的に中止されることがあります。
他の製品と違い「代わりにすぐ別メーカーで補う」ということが難しいため、ひとつの工場トラブルが全国的な品薄につながるのです。
ジェネリック医薬品の影響
ジェネリック医薬品は医療費削減に大きな役割を果たしていますが、利益が小さいため在庫を多く抱えにくいという問題があります。
さらに、一部メーカーに生産が集中しているため、その会社にトラブルが起きると一気に供給不足に陥ります。
原料の海外依存
薬の原料(原薬)は中国やインドからの輸入に頼る部分が多くあります。
輸送の遅れ、工場の停止、国際情勢の影響などで供給が滞ると、日本国内の薬も不足してしまいます。
新型コロナの流行時はこの影響が特に大きく、多くの薬が手に入りにくくなりました。
突発的な需要の増加
流行性の病気や季節の変化によって、薬の需要が急に高まることがあります。
インフルエンザの流行時には解熱剤や抗インフルエンザ薬、花粉症シーズンには抗アレルギー薬の需要が跳ね上がります。
需要の急増は予測が難しく、生産が追いつかずに不足につながることがあります。
不足時の薬局・病院での対応
薬が不足しても、薬局や病院では以下のような対応が取られます。
- 別メーカーの同じ成分の薬に切り替える
- 医師に相談して類似の薬に変更してもらう
- 緊急性が低ければ、入荷を待って処方する
完全に薬が手に入らなくなるケースは少なく、柔軟な対応が行われます。
患者さんができる工夫
供給不足そのものは個人で解決できませんが、患者さんができる工夫もあります。
- 残薬を把握しておく(お薬手帳で管理)
- ジェネリック医薬品を受け入れる(代替がスムーズに)
- かかりつけ薬局を持つ(在庫や情報を共有しやすい)
流通困難な薬の代替薬を薬剤師と相談することも◎
まとめ
薬が品薄になる背景には、
- 製造上の厳しいルールと工場トラブル
- ジェネリック医薬品の構造的課題
- 海外依存の原料供給
- 需要の急増
といった複雑な要因が絡んでいます。
薬が不足しても代替方法がある場合が多いため、困ったときは一人で悩まずに薬剤師や医師に相談しましょう。
知識を持って備えておくことで、安心して治療を続けることができます。
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